ETFは日銀が大量に買っていることでも知られますが、すでに一般の家計が投資信託よりも安く安全に運用できる手段として浸透するようになりました。
ETFを最初に知ったときは、
「ETFって何じゃい!?とりあえず手出すのやめとこ・・・」
と思いましたが、そんな危ない金融商品ではありませんでした。
むしろETFは投資信託と並んで家計の強い味方になります。
この記事を読むと、ETFとは何なのか、投資信託とどう違うのか、どんな仕組みで動いているのかがわかるようになります。
以下、深掘りして解説します。
- ETFってどんな仕組み?
- どうして現代の家計に必須なの?
- どうして投資信託よりも安いの?
ETFとは複合株式のこと
ETFの名称がビミョーすぎる話
ETFはExchange Traded Fundの略で、日本語では上場投資信託と呼ばれます。
その名の通り、投資信託が上場したものなのですが、それだけだと素人にはさっぱり意味がわからないので、名称の理由は気にしないほうがよいです。
名称は微妙なのですが、上場した投資信託であるETFは、金融商品で20世紀最大の発明と呼ばれています。
その理由は、投資家にとって決して小さくない、様々なメリットを持つ商品特性があるからです。
- 株式と比べて、分散効果が得られる
- 投資信託と比べて、低コスト
ETFの主なメリットについては後述します。
個別株(トヨタ)vs 複合株(日経平均)
ETFとは複合株式のことです。
株式投資では一般に、ソフトバンク株やトヨタ株といった個別の株式銘柄を買います。
ETF投資は、それらの株式が組み合わされたものとして買います。
投資家はETFを一つ買うだけで、極少額で多くの分散効果を得られます。
全ての企業が倒産することはまずありえないので、ETFは株式の弱点を解消しています。
例えば、世界中の株式を組み合わせたETFもあり、ごく多数の企業に分散して投資することができます。
全世界の株式8,400銘柄を組み入れたETF: VTのトップ10保有銘柄
引用:Vanguard
このVTを1口買うだけで、世界中の株式に投資したのと同じリターンを得ることができます。
ほとんどのETFは、市場平均と呼ばれる指数に連動するような仕組みで運用されるので、その指標に見合った株式の組み合わせで作られます。
ETFと投資信託
投資信託・ETF・株式の比較
ETFが初めて世に出されたのは1990年で、株式や投資信託と比べれば歴史は浅いです。
株式の概念は江戸時代(日本では坂本龍馬の海援隊が最初の説も)から、投資信託は戦前からあります。
ETFは投資信託を上場させ、投資家が株式のように取引できるようにしたものであり、株式と投資信託のいいとこどりをしたような商品になりました。
投資信託・株式との比較:ETFは両者の特性のいいとこどり
表にまとめるとこんな感じですが、最初は細かいことは気にしなくてもよいでしょう。
上場すると安心
投資信託は、1日1回だけ価格が決められるルールになっています。
また、投資家が買おうとしても、実際買えるのは2~3日後(土日祝日が入れば更に先)になってしまうため、どうしても買いたい価格で買い付けることができません。
しかし、投資信託が上場したETFは、株式のようにいつでも自由に売買ができますので、これらの弱点を解消します。
加えて、証券取引所が公平で公正な取引を促すため、ETFにはより厳しいルールを設定しています。
これにより、私たち一般投資家は安全・安心に売買することができます。
因みにアクティブ型のETF(市場平均以上を狙う)も出現してきていますが、日本ではまだ売買が認められていません。
上場すると安い
投資信託とETFは、どちらも運用会社によって作られるものですが、流通経路に違いがあります。
投資信託は証券会社が販売しますが、ETFは、証券会社を通して取引所で売買されます。
投資信託を野菜にたとえると、投資信託は八百屋さんで買うイメージですが、ETFはその八百屋さんに市場まで連れて行ってもらって、そこで競りに参加して買い付けるイメージです。
投資信託は八百屋で、ETFは市場で買うイメージ
投資信託として販売されれば、それを売った銀行や証券会社には営業報酬の支払わなければなりませんが、ETFなら直接取引なので中間マージンを節約できます。
ETFのコスト構造
以下、ETFと投資信託のコスト構造の違いをより具体的に示します。
投資信託の信託報酬は、このように3社に支払い先があります。
このうち証券会社への支払いは、「この商品売ってくれてありがとう」という意味の営業報酬です。
一方、ETFは取引所で自由に取引されているため、証券会社の営業報酬が発生しません。
ETFは多くが市場平均連動型なため、運用コストも抑えられるので、ETFを作った運用会社への支払いも低くなるというメリットがあります。
これが、ETFが投資信託よりも安いと言われる理由です。
インデックス指標に連動させることは、そのインデックスの構成銘柄と同じにしておけばよいため、ファンド運営にかける費用(ファンドマネージャーの人件費など)を低く抑えることができます。それは投資家にとっても低コストにつながり、一般にETFの信託報酬率は0.1%以下です。100万円分のETFを保有する年間コストが数百円程度におさまります。それに比べて、投資信託は一般的に0.5~1%程度、高いものでは2%というのもあります。この差が投資家にとっては大きなメリットの一つです。
市場平均に連動する理由
ETFは一般に、日経225やTOPIXといったインデックス指標に連動するように運用されています。
ETFの価格は投資家の売買取引で決まるはずなのに、なぜか株式の市場平均であるインデックスにリアルタイムで連動します。
ETFをつくる人達
引用:日本経済新聞 ETFが金融商品で20世紀最大の発明と呼ばれる理由
これはリアルタイムでETFと現物株式の交換がウラ側で行われているからです。
このウラ側(プロの人たち)の取引が、現物株とETFの価格が連動する働きをしています。
このウラ側の取引を発行市場と呼びます。
発行市場は、限定された大口のプレーヤーたち(証券会社・運用会社・機関投資家)が、現物株とETFの売買をしています。
流通市場でETFを買う私たち
ETFを買いたい私たちや日銀は、ETFの価格を押し上げようとします。
そうすると、流通市場にいるプレーヤー達が「ETFが売れるぞ!」ともっとETFを作ろうとし、株式が買われETFに交換しようとします。
結果として、ETF流通市場で投資家がETFを買えば買うほど、ETFの価格も株式の価格も上がります。そしてETFの発行数も増えていきます。
ETFがインデックスに連動する仕組みは、こちらのリンクが参考になります。
日興アセットマネジメント No.6 ETFの残高(純資産額)増減メカニズムとETFの発明 ~ETFの残高はどうやって増えるの?
このメカニズムで、現物株式の価格とETFの価格が均衡します。
ETFの運用会社は、インデックスに連動させるために構成銘柄の入れ替えを常時行っており、その銘柄と構成比率を毎日公開する義務を負っています。
投資家としては、値動きが読みやすいのと、商品の中身が常に開示されているという高い透明性が、安心材料となります。
個人投資家が知っておくと有利なこと
ETFは個人投資家にとってもうまくできた仕組みで、知らなくても損はしません。
ですが、このような裏側の取引によって支えられていることを知っておくと、無用なお金の不安を抱かなくなります。
長期で資産運用を続けるために重要なことは、資金の管理だけでなく、自身の金融リテラシーを高めておくことです。
ETFのリスク
万一上場廃止になっても、価格はしばらく市場平均に連動するため、株式のようなリスクはありません。
多数の銘柄で構成されるETFが企業倒産により価値がゼロになることはありません。
一方でETFの一番のリスクは、なんらかの理由で人気がなくなってしまうことです。
- 売りたくても売れない
- スプレッド(売り価格と買い価格の差)が大きくなる
- インデックスへの連動が難しくなる
- 上場廃止になる
上場廃止よりも、不人気になってETFのコストが高くついてしまうことのほうが懸念すべきことです。
参考までに、東証が公開している今まで上場廃止になったETFはこちらです。
ポイントとしては、10~30年後も、取引が続いているようなETFを選ぶことですが、残念ながら日本にはまだそのような銘柄がありません。
なので私は歴史も長く、流通量も大きい米国株ETFを買うことにしています。
自分に有利なところだけつまみ食い
ETFの仕組みを理解したうえで、自分に有利なことは活用するようにしましょう。
裁定取引者になるのではなく、自分が投資したい市場平均指数を選び、それに連動するETFを買えばよいのです。
一方で、いろいろな情報に流され、多数のETFを頻繁に取引するようなことは控えましょう。
株式・FXと同じように、手数料負けします。
ETFが金融商品で20世紀最大の発明と呼ばれる理由
まとめ ETFは家計の強い味方になる
本記事の要点をまとめると
- ETFとは複合株式のこと
- 投資信託が上場すると、投資家にとってメリットが多い
- 市場平均に連動する仕組みは、発行市場のプロ間の取引
- ETFのリスクは人気がなくなること
10~20年くらい前と比べて、投資は資産家や経営者でない人たちにとっても身近な存在になりました。
株式・投資信託・ETF、お金を増やすツールはそろっています。
こんな記事も書いています。
ETFは各証券会社で簡単に買うことができます。
因みにおすすめの証券会社はSBI証券と楽天証券です。
米国株ETFが圧倒的におすすめですが、注意点もあります。
それではまた。