2020年4月、新型コロナウイルスによる行動制限で、多くの企業は大ダメージ。
売り上げ減の補償は政府が行うべきだ、との意見も多いです。
そして実際、政府は108兆円規模の緊急経済対策に乗り出すと言っています。
それではこの財源はどこから来るのでしょうか?
国債を大量に発行して未来の子供たちから借金をするのでしょうか?
この記事ではこの景気対策で誰が損をするのか、という視点で、仕組みを解説しています。
結論は、政府が景気を上げようとするとお金持ちが損をします。
世界中で打ち出されている新型コロナウイルスに対する経済対策で、一番の疑問は、どこからこのような巨額の予算がとれるのかということです。
この記事は一般家庭には関係の薄いテーマです。しかし、お金の仕組み、経済の仕組みを理解しておくことは、今後の政策が自分の家計に及ぼす影響を主体的に考えられるきっかけになると思います。
政府の財源の仕組みをざっくりと解説してみました。
H2 政府の財源はどこから?
政府は108兆円規模の経済対策を打ち出すと発表しました。
一体政府の財源はどこから来るのでしょうか?
それは消費税でもありません。増税された消費税は全額社会保障に使われるという名目がありますし、消費税増税による税収増は20兆円程度です。
答えは、様々な政策には様々な仕組みを利用しますが、お金を流通させるという目的では、国債を発行することになります。
ただし、国債とは名ばかりです。
実際の実務は、紙幣を印刷するわけではなく、お金を借りたいという人に対して、銀行がエクセルのマスに数字を入力するだけです。
それで借り手はお金を発行してもらったことになります。
本当はお金に実体はありません。今や紙幣を印刷する必要もありません。
お金はみんなが認める価値であれば機能し続けます。
それは金(きん)でも、金(きん)の引換券でも、データでもいいのです。
国債は、信用されている国なら無限に発行できる
お金がみんなに信用され、価値が保たれるなら、どんなに発行しても問題ありません。
ここで条件が2つあります。
- みんなに信用されること
- 価値が保たれること
そのためには、お金の運用ルールをしっかり決め、ハイパーインフレのような暴走や、悪いことができないように管理しましょうね、とすることです。
ということでほとんどの国では、中央政府のみがそれをできるようにしています。
中央政府は国民みんなで決めた政治家で成り立ち、裁判所がみんなで決めたルール(法律)の有効性を担保してくれている仕組みになっています。たまに途上国の政府や通貨は信用されないことはありますが、先進国はどの国もしっかりした仕組みの上に成り立ち、だからみんな信用できているのです。特に円、ドル、ユーロは信用度は高いです。
私たち日本人は本質的にはそれを潜在的に意識していて、中央政府やお金の価値に絶大な信頼をおいて経済をまわしているのです。
詳しくは、MMT理論を分かりやすくまとめたこちらの動画が参考になります。
MMT・現代貨幣理論【23min】
また、上記リンク元は政治批判が入っており、ちょっとふざけた怪しい編集なので、もっとまともな動画を参考にしたい場合はこちら。
大西つねき講演「目からウロコの財政金融基礎知識」【1hr23min】
要約すると、政府や国民が理解しているお金の仕組みと、実際の仕組みが少し違います。
みんなお金は日銀が発行していて、不景気に増刷したり、古いお札を破棄して、その流通量を管理していると思いがちです。
しかし実際は、お金は銀行がエクセルのマスに金額を書き込むだけで発行される仕組みになっています。
もちろん一定のインフレ率を維持するために、がむしゃらに行うべきことではありません。
これができるのはお金を借りたい人がいるときにのみできます。お金を借りたい人がいなければできません。
それを日銀はどうやって管理しているのでしょうか?
具体例で、その仕組みを解説します。
例えば、99万円借りて事業をおこしたいAさんがいるとします。
もちろんパチンコでつくった借金を返すためにお金は貸せません。
B銀行は100万円をエクセルのマスに書き込み、1%分の1万円だけ日銀に預けるルールにします。
B銀行は99万円を借り手に貸しだせます。
日銀はそうやってどの銀行がいくらの融資金額を作り出したか管理できます。
Aさんは99万円を事業に投資し、その後150万円を稼いで100万円をB銀行に返済します。
50万円はAさんが作り出した価値の対価ですが、このお金も当然ほかの誰かから支払われたお金です。
ほかの人たちも同じように銀行で借りたお金で経済活動を成り立たせています。
今私たちが持っている現金も、今まで働いて稼いできたものに間違いありませんが、お金自体は全てそうやって返す約束の元、発行されているのです。
実際の紙幣も同じ仕組みです。現在は、紙幣とデータ化されたお金が混在していますが、今やデータ化されたお金の流通量のほうがはるかに多いです。
話がそれましたが、今私たちが蓄えている貯金は銀行に返す必要はありません。
それは私たちが誰かに与えてきた価値創造の対価として残っているからです。
しかし、流通しているお金の総額だけみれば、銀行か誰かの懐に、借金として同額残っているのです。
大半は国債という形で政府の借金となっています。
この仕組みでは、お金を借りたい人がいなければ、経済は成長しません。
お金を借りたい人が減った現代の日本では、政府が借金をします。
政府がお金を借りて予算編成し、介護や医療、教育、福祉、公務員への給与としてお金を流通させています。
上記のような支払元が政府の仕事は、国家が破綻しない限り、支払いが滞ることがないので破綻しません。
因みに中央銀行である日銀は政府の中にある期間なので、結構やりたい放題できます。
やりたい放題というのは、国民などの第三者への説明責任の負担を小さくできるという意味です。
秘密でやっているわけではないですが、多くの国民や政治家はこのことを理解していないのは事実です。
みんながお金を信じなければ、お金はその役割を果たしません。
国債は無限に発行できますが、そのつけを回される人たちが必ず出てきます。その人たちがこの事実に気づかない限り、景気対策のための国債発行はスムーズに行うことができます。
お金は無限に刷れる
政府ができる超簡単な景気対策はお金の印刷です。
政府が行える景気対策は様々なものがありますが、その中でもお金の印刷が最高に簡単です。
お金の印刷といっても、データ社会の現代は前述のとおり、エクセルのマスに数値を入力するだけで終わります。
詳しくはこちら。
作成者のRay Dalio氏は知る人ぞ知る世界最大の投資ファンドと呼ばれるBridgewaterの創業者です。
ファンドマネージャとしての成功者の強い使命感で、彼の信じる経済の仕組みを無料動画で解説しています。
この動画では景気対策は主に4つあると説明しています。
公定歩合引き下げ、ディフォルト(借金の返済猶予)、増税による所得の再分配、お金の印刷。
実際は、その他にも株式の買い付けなど、様々な対策を打つことができます。
これを知ると、私たちの経済活動など、資本主義経済でも政府の手玉の上で踊っているだけに思えてしまいます。
お金の印刷とは、実際は紙幣をするのではなく、前述した方法でお金の流通量を増やすことです。
それもお金を必要としている人たちに流通させることで、社会不安をなくし、不況を脱することができます。
大量に現金が供給されれば、今出回っている現金の価値が下がる
お金が大量に供給されれば、お金の相対価値が下がります。
いわゆるインフレです。インフレとは物価が上がり、お金の価値が下がることです。
お金が大量に供給されれば、紙幣1枚1枚の価値が薄まってしまいます。
そうすると、今お金を持っている人たちは損することになります。
これが、国家が景気を上げようとすると、お金持ちが損をするという結論です。
政府の景気対策で、お金持ちがもっているお金の価値が薄まり、お金を必要としている人たちにお金が流れるという、富の再分配がおこせるのです。
因みに真のお金持ちの人たちはこの事実を既に知っています。
なのでこのリスクを回避する行動をしている人も多いです。
真のお金持ちの人たちは、資産を現金のみで保有せず、金や不動産、株式といったほかの資産に変えて保有しています。
そうすることで、不況からくる経済対策の副作用から逃れようとしています。
一方で、この事実に気づいていない現金を大量に持っている人たちは気づかずに損をしています。
お金の価値は減り続けます。
紙幣そのものは有形でも、その相対価値は減ってしまうのが事実です。
以下のように、ジェレミー・シーゲル氏が示す図のように、歴史的にも証明されています。
株式投資の未来を書いたジェレミー・シーゲル氏によると、過去200年間でドルの価値は実質0.07倍になったとしています。
これは株式は保有していれば配当があるため、福利効果でどんどん増えていきます。
一方で、お金の相対価値は、時間がたてば経つほど希薄化してしまうのです。
まとめ
景気対策は、お金の価値を希薄化し、再分配する仕組み
政府は国債をいくらでも発行できる。
みんなが信用する限り、お金の価値は担保される。
お金を発行すれば、お金の相対価値は薄まる。
実質、経済政策は今お金を持っている人から必要とする人への再分配が起こる
自分の資産を守るためにも、しっかりお金の仕組みを理解し、賢く使っていきましょう。
我々の経済活動がいかに政府の手玉の上で踊っているだけと思いがちですが、実際には規模的にも時間的にも非常にマクロな概念ですので、ほぼ関係ないです。
毎日価値を生み出し続け、今日を豊かに生きましょう。