GAFAMでは年収1,000万円は低いほうでしょう。
ただ、日本法人の給与水準は本国と異なっている場合もあるので、一概には言えません。
S&P社の2021年の調査によると、Googleの従業員給与の中央値は$273,493(約3,300万円)でした。
一方でAppleの給与中央値は$57,783(約700万円)と差があります。
出典:S&P Global Market Intelligence (2021)
年収は人によって大きく差があり、一概には言えません。
無理やり言って、平均1,500~2,000万円とか、新入社員では500~1,000万円くらい差があるでしょう。
でも、本当に気にすべきは、どうやってそんな高い給料が決まるのかだと思います。
こんにちは、AJO(@ajo_kakei)です。
私はGAFAMではありませんが、似たような米国大手テック企業で10年以上勤めていて、人材の交流もあります。
もっと言えば、これらの企業への転職活動をとおして自分の市場価値がどれくらいか測ったりしました。
日本国内において、外資系と日本企業では評価のされ方が根本的に違うことは知られていますが、「外資は結果が全てだ」というイメージがまだあるようです。
でも、そんなのは実態とだいぶかけ離れています。
なので、少なくとも米国大手テック企業の業界での年収や評価、福利厚生などの待遇についてまとめました。
- GAFAはGoogle, Apple, Facebook, Amazonの略。そしてMicrosoftを加えてGAFAMと言ったりします。
- 世の中のITサービス基盤を提供するプラットフォーマー。
- この5社で全世界全ての企業の時価総額の10%を占める巨大テック企業群のことです。
この記事を読めば、いわゆる外資系の給与の実態がわかるようになります。
- GAFAMの給料はどうやって決まるのか知りたい
- 高待遇なのに、退職する人もいるのはなぜ?
- 休みは?評価は?GAFAで働く人ってどんな感じなのか知りたい
GAFAM社員が高年収になる仕組み
まず、GAFAMの給料が高い理由は、GAFAMという会社自体が儲かっているからではなく、優秀な人材を競合他社に取られないようにする狙いがあるからです。
企業にとって給与水準は優秀な人材を獲得するための筆頭課題です。
会社側の立場からしてみれば、優秀な人材を手放したくないし、競合会社から引っ張り込みたいです。
そのためには、給与水準は競合他社よりも高く設定したいと考えます。
GAFAMをはじめIT大手の給与水準は、まとめると以下の要領で決まります。
- 同業他社との相場観
- ジオグラフィ(国と地域)
- 企業内ランク
順番に解説していきます。
GAFAMの給料相場の決まり方
先述のとおり、GAFAMで給与水準が決められる要素は主に3つあります。
- 同業他社
- ジオグラフィ(国と地域)
- 企業内ランク
①同業他社
GAFAMは業界内の同業他社を10~20社くらい厳選し、それぞれの会社の給与水準を調べ、自社の給与水準を上位%に位置したいかを人事や上層部で決めます。
HR(人事)の業界で、企業の給与水準を調べている調査会社があります。
そこから似たような業界や競合企業の給与水準を調べ、自社を戦略的にどの位置に置きたいかで、自社の給与水準を決めています。
因みにこのようなPeer assessmentでは、給与水準だけではなく、働き手にとって魅力的となる体制作りも対象になります。
例えば、有給休暇の日数、ボーナス支給額の設定方法など、数値で示すことができ比較できる福利厚生を、上位何%の水準にしたいかという点についても、決められます。
②ジオグラフィ(国と地域)
GAFAのようなグローバル企業では、国によって給与水準は大きく異なります。
例えば、米国は非常に給与水準の高い国です。日本やシンガポール、ヨーロッパ諸国も高めです。
一方、南米、東南アジアなどの新興国の賃金相場は低く、先進国に比べ3~5割の国もあります。
2020年現在だと、中国の賃金相場が高騰しているのはうなずけますね。
グローバル企業はジオグラフィ(国と地域)によって、給与相場をカテゴリー分けします。
例えば、Category 1~4と段階に分け、米国、日本などをCategory 1、中国などをCategory 2、南米、中東、ロシアなどをCategory 3、東南アジアをCategory 4とし、それぞれのカテゴリーの中で、個別事情を加味し更に分類します。
- Category 1 北米、日本、シンガポール、英国、ヨーロッパ諸国
- Category 2 中国、台湾、韓国
- Category 3 南米諸国、ロシア、インド
- Category 4 東南アジア諸国
このようにして、給与水準が国の適正な範囲に収まるよう管理しています。
③企業内ランク
役職をつける日本企業と似て非なる仕組みで、GAFAMは地位や専門性によって、給与水準がランク分けされています。
例えば、グレードと呼ばれる名称で、5~10段階くらいにランク分けされます。
高い功績を収めることによって、ランクは上がっていきます。
- Grade 1 新入社員
- Grade 2 功績を残した社員
- Grade 3 大きな功績を残した社員
- Grade 4 マネージャ、専門技術職
- Grade 5 シニアマネージャ、シニア専門技術職
- Grade 6 ディレクター、上級管理職
新入社員でも博士号取得者は高いランクから始まる場合もあります。
一般的には、同一ランクの給与幅の中で給与額は決められます。
同じランクの中でも、さらに細かく分類される場合もあります。
これら3つの基準の上に、給与水準が成り立ち、実際の給料は、従業員ごとのパフォーマンス評価を元に、上司が額を決められる裁量幅をもっています。
GAFAMの待遇と社員が辞める理由
GAFAMが人材獲得のために費やす努力は、給与額だけではありません。
働きやすい環境や、企業文化をはぐくむべく、グローバル企業は様々で独自のベネフィットを用意しています。
ここからはGAFAMをはじめグローバルIT企業でよく見られる福利厚生について解説します。
①誕生日が休みになる理由
優秀な社員が求めるものは給料だけじゃありません。
GAFAMの福利厚生には、以下のようなものがあります。
- 有給休暇は法定休暇日数を超える
- 独自で誕生日休暇、育児休暇、サバティカル休暇がある
- 在宅・オフィス勤務でも、勤務時間の干渉がない
有給の日数は、例えば、日本では3年半以上働いている従業員には14日以上有給を与えるよう労働基準法で定められています(参考:厚生労働省)が、それ以上の日数がつきます。
そしてめずらしいものに誕生日休暇1日、サバティカル休暇30~40日があります。
誕生日休暇とはその名の通り、従業員の誕生日に休暇を申請できます。
サバティカル休暇とは、5年~7年ごとにもらえる長期休暇のことで、元々アメリカの大学教授など裁量労働者向けに設けられたリフレッシュ休暇です。
サバティカル休暇は長く働くモチベーションになるのと、1~2か月、仕事から離れることによって、地域ボランティアなどの社外活動からの学びを通して、新たな思考・挑戦を職場にもたらす効果があると言われています。
また、在宅やオフィス勤務でも、出社時間・退社時間にうるさく言われることもありません。
みんな尊重すべきプライベートがあり、本人やチームの業務に支障がなければ、タイムカードのような非人間的な管理はされません。
②キャリア開発をみんな考えている
GAFAMの人材も流動的で3~5年で退職する人も少なくありません。
退職する理由は、会社や上司とウマが合わないからではありません。
ほとんど全ての社員がキャリアアップをそれぞれ考えており、会社もそれを促進させようとしています。
GAFAMで働く社員は、社会人においての自己実現のために、今の会社を選び、ステップアップのために社内・社外のポジションを常に探しています。
自分のやりたいことと、会社やその役職が求めている方向性がマッチしたほうが、会社から一方的に役職を与えるよりもはるかに高いパフォーマンスを発揮するからです。
これは一般職員からCEO幹部や上級役職でも一緒です。
人材の回転率は高いですが、会社を辞める理由がポジティブですね。
会社では、定期的に上司と部下が、部下のキャリア開発のために何ができるか、今どうか、といったことが話し合われます。
その役職で任されている職務や責任に加えて、従業員本位のやりたいことを会社としてどう実現させることができるのか、という視点が大事にされています。
給料はPerformance, Process, Presentationで決まる
では、従業員の成果や給料はどう評価されるのでしょうか?
①結果も努力も評価される
競争と変化の激しいテック企業も従来は典型的な成果主義でした。
ところが、2019年頃から、新しい人事評価の流れがでてきました。
どうすれば社員の能力を最大限活かすことができるのか、研究機関と企業が従業員のモチベーションについて研究・実験した結果、成果よりも努力を評価されるほうが、人はうれしいと感じるということがわかりました。
そこで、従来の目標や会社に対してどれだけ成果を上げたかという点だけではなく、どのように結果を出したが、だれとどのように協力したかなど、その軌跡も評価する傾向にあります。
②会社にどのように貢献したか説明せよ
成果と努力が評価される流れにはなってきていますが、それでも成果というのは主要な評価指標です。
社員を評価するのはその上司であるマネージャが主体で、マネージャの大きな責任の一つです。
社員一人ひとりに与えられている裁量が大きいので、マネージャは部下一人ひとりの業務や成果を随時把握していない場合が多いです。
そのため部下は上司に対し、自分が会社にどのように貢献してきたかを説明し、上司と合意します。
1:1でプレゼンを行う場合もありますが、書面でしっかりその対話がなされたことを残します。
マネージャはその情報を整理し、他部門のマネージャ同士やそのうえの上司と相談し、人事の監視を受けたうえで最終決定をくだします。
社員自身が社内で自分がどう会社に貢献したかという視点でセールスする能力が問われます。
③企業理念に沿った行動をしたか
GAFAM企業はそれぞれに独自の企業理念が存在します。
求められる人材像は、このような理念に沿った思考と行動ができるかという点が問われます。
人事評価も、会社独自の企業理念に沿って行われる場合が多いです。
例えば、Googleの社是「10の事実」では、以下の視点を非常に非常に大切にしています。
- ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる。(Focus on the user and all else will follow.)
- 一つのことをとことん極めてうまくやるのが一番。(It's best to do one thing really, really well.)
- 遅いより速いほうがいい。(Fast is better than slow.)
- ウェブでも民主主義は機能する。(Democracy on the web works.)
- 情報を探したくなるのはパソコンの前にいるときだけではない。(You don't need to be at your desk to find an answer.)
- 悪事を働かなくてもお金は稼げる。(You can make money without doing evil.)
- 世の中にはまだまだ情報があふれている。(There's always more information out there.)
- 情報のニーズはすべての国境を越える。(The need for information crosses all borders.)
- スーツがなくても真剣に仕事はできる。(You can be serious without a suit.)
- 「すばらしい」では足りない。(Great just isn't good enough.)
引用元:Googleの社是「10の事実」
アマゾンの求める人材像もAmazon Leadership Principlesで見えてきます。
企業理念のような、会社の統率力を補う言葉は、しばしば有効に活用されます。
自分の主張を社内で説得力を上げるために、理念に使われている言葉や言い回しを巧みに使いこなされます。
同様に、人事考課のときも、社員の成果や行動の評価はこれらの精神にのっとって行われます。
それぞれの企業に独自の企業理念があり、給料や評価が決まる軸となっています。
よって、同じ仕事や成果を上げたとしても、評価のされ方が全く異なってくるのです。
【社員が主役】GAFAMの給料の決まり方|福利厚生・評価・退職理由について
まとめ
GAFAMの給料の決まり方について、以下にまとめます。
給与水準の決まり方は3通り:同業他社・ジオグラフィ・社内ランク
- あくまで個別評価より前の枠組みです。給与水準も会社間で相対的に決まるので変動します。
人材の流動性が高いのは、社員それぞれが会社を超えたキャリアアップを目指すから
- 退職理由は、人それぞれですが、基本的に社員は自己のキャリアを長期的に考え、ステップアップのために転職していきます。
会社に沿った成果と姿勢を示すことで評価される
- Performanceに加えて、Processが評価されるようになっています。また、それをどう評価する人に示すかという能力も問われます。
サラリーマンとして高見を目指すなら、GAFAMの例を参考に給料の決まり方を知っておくのは得策だと思います。
年収を上げるには、盲目的に会社で努力するだけでは落とし穴にハマりますので、これからの時代、サラリーマンとしてどう振舞っていくべきか、会社の枠組みを超えたレベルで考えていくことが基本になっていくと思います。
同じ仕事をしていても、他社では評価方法も給料も違います。
転職や副業をすることによって、そのスキルを活かし磨いていく手段もあるってことです。
以上、参考になれば幸いです。
ところでGAFAMという言葉も死語になりつつありますね。
2020年代は各社社名の変更、Facebookの降下、Teslaの隆盛があったりするので
Google -> Alphabet
Facebook -> Meta Platform
AMATAM(Alphabet, Microsoft, Apple, Tesla, Amazon, Meta)のような表現が使われるかもしれません。
こんな記事も書いています。
それではまた。