VTもVTIもVOOも近年人気の米国籍ETFです。
米国株投資や全世界株投資を考えているなら絶対に押さえておきたいのがこれらバンガード社の商品ですね。
今回はVT、VTI、VOOのどれを選べばよいかについて考えてみます。
どれも投資対象としては優良な商品ですが、どれを選べばよいか迷いがちです。
当サイトとしては、VT、VTI、VOO3つとも全ておすすめのETFですが、3つ全てに投資すべきではなく、この中だったらどれか一つに選び抜くことをおすすめしています。(参考記事:VT, VTI, VOO全部買うのはあり?)
そこでこの記事では、これら3つのETFが人気の理由とそれぞれの商品特性をまとめて比較してみました。
この記事を全部読めば、これら3つのETFの特徴がわかり、自分にとってベストな商品を選択できるようになります。
- 全世界に投資したければVT、全米がいいならVTIかVOOどちらでもよい。
- あとは好み。
- この中での選択に神経質になりすぎないこと。「○○を選ぶのが正解」という思考は卒業!
因みに私はVOOを買っています。
- 米国株ETFでどれを選ぶべきか迷っている。
- VTとVTIとVOOそれぞれの特徴と違いを知りたい。
人気の理由① バンガード&低コスト
VT、VTI、VOOはバンガードシリーズの中でも定番のETFです。
バンガード社の提供するETFはいづれもコストに定評があるので人気です。
他と比較してみましょう。
ETFを運用するような会社は以下の3社が世界最大手です。
いづれも運用資産総額は数百兆円レベルで、日本の金融機関とは比べ物にならないくらい巨大です。日本で一番大きいのは三井住友トラストで80兆円程度(2021年3月現在)。
バンガードは2022年に運用総額が900兆円を超え、今最も勢いのある会社です。
$7.3T = 912兆円(1ドル125円換算)
出典:Ichi.pro
また、個人投資家向けインデックスファンドの運用規模が一番大きく歴史も長いのもバンガード。
VT, VTI, VOOを含めたバンガードシリーズと呼ばれるETF商品を豊富に提供しています。
ブラックロックはiSharesシリーズと呼ばれる豊富なETFシリーズを、ステートストリートはSPDR(通称:スパイダー)と呼ばれるブランドで同様に多くの商品を提供しています。
- ブラックロック社 → iシェアーズ(iShares)
- バンガード社 → バンガードETF(Vanguard ETF)
- ステートストリート銀行 → スパイダー(SPDR)
バンガードのETFは、iSharesやSPDRと並んで、純資産額、回転率ともに優秀なんですが、バンガードは特に低コストなのが人気の理由です。
バンガードの商品は圧倒的に低コスト
出典:Vanguard
バンガードは積極的にETFの経費率を下げており、他2社はバンガードを追う形で安くする傾向があります。
S&P500に連動するETFでみてみましょう。
VOOのようにS&P500に連動するETFはiSharesのIVV、SPDRシリーズのSPYがあります。これらは競合商品です。
- VOO(バンガード) 2019年4月に経費率を0.04%→0.03%に引き下げ
- IVV(ブラックロック) 2020年6月に経費率を0.04%→0.03%に引き下げ
- SPY(ステートストリート) 経費率0.0945%
この辺もバンガード社がいかに投資家のニーズに応えようとしているかがよく表れていると思います。
バンガード社について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
人気の理由② シンプル
VT, VTI, VOOのETFは投資対象が非常にシンプルです。
イメージとしてはこんな感じで、とても投資対象がイメージしやすいです。
VT, VTI, VOOの投資対象
他のETFと比較してみましょう。
他に日本で買えるバンガードのETFはこんなにあります。
日本で買えるバンガードのETF
出典:バンガード・インベストメンツ・ジャパン バンガードETFより抜粋
結論、ありすぎで困ります。
これ見てたら、どれ買ったらいいか素人は絶対わかりませんね。
でも本当はもっとたくさんあるというのだから、プロの人たちはいい仕事ができそうです。
ETFの製造元である運用会社が、多様な投資家のニーズに応えようとするためです。投資対象が債券だったり、中小株のみだったり、特定の市場に特化したものだったり、ファンドは作ろうと思えばいくらでも作れます。投資家には個人投資家だけでなく、ヘッジファンドや年金運用するような機関投資家もいます。このような投資玄人(くろうと)は、これらの商品をうまく組み合わせて理想のポートフォリオを作りたいわけですね。結果、いろんな種類のETFや投資信託が世に放出されるのです。
ETFがたくさんあり過ぎても、一般の人にとっては必要ないどころか困惑するだけです。
なのでシンプルにわかりやすく分散投資できるVT, VTI, VOOが選ばれます。
- バンガード:世界最大手で個人投資家向けETFが充実
- 低コスト:業界平均と比べて安い
- シンプル:つべこべ考えずスッキリ分散投資
VTを選ぶ理由
VTは、分散投資以外に株のあれこれを考えたくない個人投資家に人気です。
その①:とりあえず株式にまるっと投資したい
VTに投資したい人は、分散投資をできるだけ徹底して、リスクを抑えたいと考える人です。
全世界に投資すれば究極の分散効果を得られます。
とりあえず現金から株式にポジションを移したいとなれば、どの株式を買うか迷ってしまいますが、「VTは株式の代表格」なのであれこれ考える必要がないです。
また、世界経済は成長し続けるという前提を肯定する人にも向いています。
日本のように経済成長があまり見込まれない国もありますが、世界全体では成長し続けます。
理由はいろいろ主張がありますが、
- 人口増加、GDPの成長
- 先進国がグローバル経済を牽引
- 貧困国、途上国、新興国の台頭
などです。
その②:米国バブル・カントリーリスクを気にせず全世界投資
VTI, VOOは投資対象が米国のみのため、カントリーリスクがあります。
- テロ・戦争
- 国家のデフォルト
- 人種差別問題
米国という国単位で何かが起きても、全世界投資ならリスクは小さくて済みます。
また、いくら経済の強い米国と言えども、今が米国バブルなだけかもしれません。
バブルを懸念して長期的なパフォーマンスはさほどあがらないという考え方もあります。
- とりあえず現金より株持っておきたい(変に株式投資の世界に深入りしたくない)
- 【世界は経済成長する】とりあえず全世界に分散しとけば間違いない
- 米国バブル崩壊を回避したい
VTI・VOOを選ぶ理由
VTIやVOOに投資するのは、強い米国経済とその成長に期待する人です。
その①:米国のほうが世界全体より成長すると思う
米国経済は圧倒的に強いです。
時価総額ランキングでは、常に上位は米国企業が占めています。
出典:Wikipedia: List of public corporations by market capitalizationから抜粋
企業の顔ぶれこそ20年で様変わりしますが、国別ではなぜか米国企業の存在感は変わりません。
加えて米国は他の先進国とは違って、これからも人口は増え続け、超長期にわたって経済大国であり続けると予測されています。
次々と世界的企業が生み出される米国の魅力。
投資家が米国に期待するのは、次のような基盤があるからです。
- 起業家精神が強い文化
- 新しいことに挑戦することや、お金を稼ぐことに対して寛容であり、起業も成長もしやすい文化があります。
- 金融インフラや法整備が発達
- 株式市場を支える金融インフラや法律が整備されています。この分野においても最先端である金融先進国です。
- 株主中心主義
- 会社は株主のものであるという株主第一主義が浸透しており、投資家の利益が尊重される文化があります。
他にも、米国へ集中投資することで、経済成長の足を引っ張る国や、リスクの高い国を投資先から除外したいと考える人もいます。
その②:米国株中心にポートフォリオを組みたい
米国の企業全体に投資するだけでも分散効果はあります。
加えて、日本や他の先進国、新興国への投資は他の商品でカバーするというやり方でポートフォリオで組むこともできます。
例えばこんな感じ。↓
VTIとVEUを保有することで、全世界をカバーできる
出典:筆者作成
VTIは米国に上場する中小株を含めた全ての企業3,600銘柄が投資先。
VOOはS&P500に選出された米国の優良大型株500銘柄が投資先ですが、時価総額ベースではVTIの約8割くらいをカバーします。
VTIとVOOは連動するベンチマーク指標は異なりますが、銘柄構成が似ており、パフォーマンスも似通っています。
VOOのベンチマークであるS&P500は有名企業が多いため、低リスクで安心感があります。また、S&P500は歴史も長く優良なベンチマーク指標なので、S&P500に連動するETFは根強い人気があります。VTIはリスクの高い中小株も含めることによって、将来有望な銘柄にも割安なうちに投資しておくことができる特徴があります。いづれにせよ、VTIの中でS&P500社の占める時価総額の割合は80%以上あるため、パフォーマンスはVOOと近似します。
ちなみにVTIとVOOの経費率は0.03%で最安のETFです。VEUとVTの経費率は0.08%なので、VTのみの全世界投資よりも、多少経費率は下がりますね。
- これまでもこれからも米国経済が最強。もしくはいい線で成長。
- 金融インフラ、文化、法律がしっかりしているところで投資したい。
- 足を引っ張る国への投資は避けたい。
銘柄構成とパフォーマンス比較
VT, VTI, VOOの特徴と構成銘柄比較
VT、VTI、VOOの特徴の比較を次の表でまとめています。
コストはVTがちょっと高めです。高めといっても日本の最安の投信の半額以下ですが。
VTIとVOOは米国株中心なので管理コストが低く、世界最安のETFです。
純資産額はVTだけ見劣りしますが、これは米国人投資家が国際投資を「米国」+「米国以外」で組むことが多いからです。全世界投資したい日本人投資家には人気です。
構成銘柄はVTが圧倒的に多く、高い分散効果が期待できます。
ETFとしてはVTIが一番長く登録されており、20年近い歴史があります。VTとVOOは比較的最近で10年ほどの歴史です。
次に、VT, VTI, VOOそれぞれの投資先銘柄を見てみましょう。
VT, VTI, VOOの保有上位10銘柄
出典:Vanguard VT, VTI, VOO(2022年2月28日現在)
上位10社はほぼ似た銘柄が並んでいます。
2022年現在もGAFAMが圧倒的な存在感ですね。
VOOと比べ、VTやVTIはトップ10銘柄への依存度が下がっており、分散効果がより大きいのが見て取れます。
因みに「VTI」「VOO」とGoogle検索すると、チャートがすぐに出てきます。(VTだけはVT stockとか入れれば出ます…)
こんな感じです。↓
過去のパフォーマンス比較
最後にそれぞれの過去のパフォーマンスを見比べてみます。
注)2022年2月28日より起算
出典:Vanguard VT, VTI, VOO(2022年2月28日現在)
VTはVTI, TOOと比べると過去10年くらいの中期のパフォーマンスは低いですが、それでも8.7%というのは出来過ぎな数字です。
これは2010年代は米国だけ調子がよすぎたためです。近年米国株が人気の理由なここにあります。
もっというとGAFAやMicrosoftの調子がよすぎたんですね。年率13%といった数字は現実的ではありません。
しかし、2010年あたりから米国株投資してきた人は素晴らしい資産形成をされていますね。
どの銘柄を選んでも、ただ貯金しているよりもはるかに大きなリターンがありました。
VTとVTIとVOOの比較まとめ
以下、本記事の要点まとめです。
まとめ
- VTは全世界8,400銘柄に、VTIは全米3,600銘柄に、VOOは全米500銘柄に投資。
- 全世界に分散投資したいならVTに、米国経済を信じるならVTI, VOOに。
- VTを選んでも米国の比重が大きいのが現状。
- VTIとVOOはコストも中身もパフォーマンスもほぼ同じ。
ETFも投資信託も年々低コスト化してきています。最近では売買手数料も総経費率も無料のETFが米国で出てくるほど、証券会社のコスト競争が激化しています。今後の証券業界も徐々に変遷しますが、ある日突然急激に変わるものでもありません。しっかり関心をもちながら、自分の投資戦略を確認していくのがよいでしょう。
おそらくこの記事を読んでいる人の最大の疑問は、VT, VTI, VOOの中で今後どれが一番高いパフォーマンスを上げるのかだと思います。
残念ながらそれは誰にもわかりません。
しかし、この中でどれを買えば一番運用成績を上げられるかという基準で考えても、リターンを上げることはできませんし、正しい投資の考え方でもありません。
インデックス投資という手法を選んだ時点で、自分の資産を市場の波にのせることだけしかできないはずです。
VT, VTI, VOOはどれも投資対象としては素晴らしい商品なので、あとは自分のアセットアロケーションに従って選ぶだけです。
ちなみに、VT、VTI、VOOのETFを買う代わりに、これらにまるっと投資できて、手軽に積立ができる日本の投資信託も人気です。
- 楽天・全世界株式インデックスファンド(通称:楽天VT)
- 楽天・全米株式インデックスファンド(通称:楽天VTI)
- SBI・バンガード・S&P500インデックスファンド(通称:SBI VOO)
米ドルを持つのが面倒な人、手軽に少額投資したい人は、米国籍のETFよりこれらの投資信託のほうがおすすめです。
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VT、VTI、VOOのどれかを決めきれない場合、とりあえず全部買っとく、というのはよくないという話です。
それではまた。