日銀がETFを買うのは、刷ったお金を市場に出すためです。
資産運用の目的でETFを買う私たち投資家やGPIF(年金を運用する公的機関)とは全く異なる目的です。
ETFと日銀について知れば、この行為はとてもシンプルに理解することができます。
- 日銀がETFを買う理由をシンプルに理解したい
- ETFで資金供給できる仕組みを知りたい
- 日銀の市場介入っていいことなの?
ETFって何?
ETFは、証券会社が組成した株式の詰め合わせパックです。
名前がわかりづらく意味もあまりなさないので覚えなくてよいですが、Exchange Traded Fundの略です。
日本語では上場投資信託と呼ばれます。覚えなくていいです。
ETFという商品が登場してまだ30年ほどと歴史が浅いので、まだ広く一般に理解されていないだけです。
個人的には「複合株式」とかそんな名称に変えてほしいと思っています。
一社に投資するのが株式、上場する日本企業2,000社にまるっと投資するなど、複数の企業に投資するのがETFと覚えておきましょう。
- 株式 一社に投資
- ETF 複数社に投資
ETFの価格は複合する株式の価格の平均になるため(TOPIXのように)市場平均価格になります。
日銀がやろうとしていること
日銀の存在意義は、物価を安定させることです。
物価は経済状況で変動してしまうので、物価を安定させるために、お金の出回る量を調節します。
平成の時代からデフレだったので、日銀はデフレ脱却のために、お金をどんどん刷って増やしました。
お金が増えれば、お金の1枚の価値が下がり、物価が上がります。
インフレ目標2%をかかげ、大規模な資金供給をここ10年以上ずっと行ってきました。
量的金融緩和とも呼ばれています。
日銀は日本で唯一のお金をつくることができる銀行(発券銀行)です。日銀だけが円を増やせます。
実際には、お金は印刷局で印刷するか、デジタルで簡単に発行できます。
問題は、その増やしたお金をどう市場に供給するかです。
2010年10月に、日銀は「包括的な金融緩和政策」(参考:日本銀行)の実施を決定をしました。
端的にいうと、「国債買ってるだけじゃダメだわ・・・株式も買おう。」ということになったのです。
刷ったお金が市場に流れる仕組み
日銀がお金を市場に供給する方法はいくつかあります。
- 国債を買う
- 社債を買う
- 株式を買う
日銀といえば国債を大量に買っているイメージがあると思います。
国債は政府が発行する借金で、半分以上日銀が買っています。
こうすることで日銀は政府に資金供給することができ、政府はそのお金を使って公共政策などを実施し、社会や経済が回りだす仕組みになります。
また、日銀は、社債を買うことでも資金を市場に流せます。
企業が社債を発行し、日銀から得た資金で、設備投資や企業活動を活発化することで、経済が回りだします。
同様に、企業は株式という形でも資金調達をしますので、ここに日銀がETFで買い入れれば、日本企業全体に資金供給することになるので、経済が回ることにつながります。
因みにJ-REITと呼ばれる不動産市場に特化したETFも日銀は買い入れています。
家、土地、ビル、工場などの不動産に資金が流入し、経済が活発になります。
日銀のお金が流れる先をまとめると以下です。
- 国債を買う → 政府にお金が流れる 公共事業で経済も活性化
- ETFを買う → 企業にお金が流れる 設備投資・企業活動で経済も活性化
日銀がETFを買うと、証券会社が株式を買うはめになる
ETFは私たち一般投資家も買うことができますが、日銀は、買う量も理由も私たちとは違います。
まず、日銀の目的は、資産運用ではなく、刷った現金を市場に出すことです。
しかもその額が、5~6兆円規模と半端な額じゃありません。
通常どの証券会社もそのような金額のETFを用意できていないので、その額に見合った量のETFを用意する必要があります。
証券会社は株式市場で株式を大量に買い漁り、ETFをどんどん発行します。
日銀という大口顧客がいるため、言わずもがな、日本の株式を青田買いです。
そうすることで、日本の株式市場全体の価格が吊り上げられていく仕組みになっています。
まとめ 日銀のETF買いは市場にお金を流す方法の一つ
- ETFとは、証券会社が組成する複合株式のことです。
- 日銀の目的は物価の安定であり、インフレを目指す今、お金を大量に供給しています。
- お金の供給先は、国債などの債券市場だけではなく、株式市場を通しても行うようになりました。
- こうすることで、政府だけでなく、企業にもお金が流れる体制になります。
- 日銀がETFを買うと、証券会社がETFを用意するために株式を買い、結果企業に資金が渡り、経済活性化につながります。
今までいくらのETFを買い付けたのかは、こちらで日銀が公開していますが、毎年5~6兆円のペースで増加傾向です。
出典:日本銀行より筆者作成
株式を買うことは、国債など債券を買うことと違って、売り時を考える必要があり、出口戦略がわからないのが問題として指摘されているようです。
また、お金の供給量を調節できる国の機関が、株式市場へ介入することが果たしてよいことなのかどうかということも疑問視されています。
私は別にずっと株式を保有していてもいいと思います。
もちろん景気過熱時には、金融引き締め策として売るでしょう。
そのような時期が来なければ、50年、100年だろうが、バイアンドホールドするのではないでしょうか。日銀も機関投資家で寿命や相続がないわけですから。
GPIF(年金を運用する公的機関)もそうして、超長期の資産運用を行っています。
日銀による市場介入を例に見るように、金融政策は常に未曾有の境地に行く運命にあります。
需要と供給でなりたつ景気はサイクルしますが、政策については同じことは繰り返されづらく不可逆です。
過去を振り返って考えてみます。
- 戦前のような物価には戻れない
- インフレは続く、デフレは続かない
- 管理通貨制度にしてから金本位制には戻れない
- 公定歩合による調節はもう効かない
- 国債の買いオペ・売りオペだけじゃもう効かない
後戻りができない状態になって、初めて人々が受け入れて、経済が前に進むのではないでしょうか。
こんな記事も書いています。
それではまた。